糖尿病腎症はどこまで回復できるか

 

何とか腎臓病を治せないか。日本の人工透析患者はついに23万人を超えた。特に激増する糖尿病患者を中心に、末期腎不全で透析を受ける患者は毎年約1万人も増えており、有効な治療法がないまま、異常な事態に進みつつある。
こうした中で「進行するだけで、引き戻せないとされてきた慢性腎不全を元に戻せる見通しが出てきた」と名古屋市大大学院の木村玄次郎教授(臨床病態内科学)は指摘する。
▽ゆっくりだが回復

 
 
 

腎不全は元に戻せる
早めにRA系阻害薬を
血圧を正常以下に
 何とか腎臓病を治せないか。日本の人工透析患者はついに23万人を超えた。特に激増する糖尿病患者を中心に、末期腎不全で透析を受ける患者は毎年約1万人も増えており、有効な治療法がないまま、異常な事態に進みつつある。
こうした中で「進行するだけで、引き戻せないとされてきた慢性腎不全を元に戻せる見通しが出てきた」と名古屋市大大学院の木村玄次郎教授(臨床病態内科学)は指摘する。
▽ゆっくりだが回復
 「糖尿病で腎不全の兆候があれば、血管を収縮させるレニン・アンジオテンシン(RA)系ホルモンの働きを阻害する降圧薬を使って正常以下に血圧を下げると、長期的によくなることが分かってきた」(同教授)
腎臓機能が元に戻ることが分かったきっかけは5年前のことという。
糖尿病性腎症の患者で膵(すい)移植を受け、血糖値を完全に正常に戻した人が10年後、腎組織像も正常化したという事実。ゆっくりではあるが、うまくすれば回復することが分かってきた。
慢性腎不全にRA系阻害薬を長く使うと、3年ぐらいでタンパク尿が消え、腎臓で老廃物をこし取る役割をしている糸球体のろ過量が再び上昇する症例もあるという。
以前は腎臓が悪くなったとき「血圧は高くていい」あるいは「むしろ高い方がいい」と考えられていたという。弱った腎臓が血中から老廃物をこし取るためには、高い圧力をかける必要があるとの考え方からだった。
▽考え方の転換を
 実際、血圧が下がると、腎機能の指標とされる血中クレアチニン濃度が上がり、腎機能悪化を示す。「このため、つい最近まで降圧薬をやめ、血圧を高い方に戻すということをやっていたぐらい」と木村教授。
確かに短期的には正しかったが、最近になって長期的には血圧を下げる方が臓器保護のためにはよいことが分かってきた。血圧を下げると、腎機能悪化の進行が抑制されるからだ。
同教授は「今やるべきことは①血圧は高くてよいという考え方の180度転換②RA系阻害薬で血圧を下げる③腎不全進行に可逆性があることを広く知ってもらうの3つ」と強調する。
降圧薬には効くメカニズムの違いによっていくつかの種類があるが、同教授がRA系阻害薬と末期腎不全患者の発生地域を調査した結果でも、RA系阻害薬の売り上げが多かった地域で末期腎不全患者が少ないことが統計的にはっきりと明らかになったという。
▽循環器系に負担
 腎障害に進む恐れのある糖尿病患者にとって、さらに怖いことがあることも最近の調査で分かってきた。
英国で糖尿病患者約5000人を平均約10年追跡した「UKPDスタディー」。糖尿病では最大規模の調査だが、その結果、腎機能の悪化よりも、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中などの心血管事故で死亡する率の方が高いことが判明したからだ。
「腎臓が悪いということは、全身の循環器系に負担がかかっているというサイン。腎臓が少しでも悪いことが分かったら、命を守ることに強い関心を持たなければいけない」(同教授)
幸い、RA系の阻害薬は、心血管事故へ進むステップも抑制できることが分かっているという。
木村教授は「大事なことは、糖尿病の人は半年に1度は尿の微量アルブミンを検査すること。もし出たら、RA系阻害薬を使い始める。また糖尿病で少し血圧が高い人はRA系阻害薬で130―80以下にきっちり抑えること。RA系を阻害すれば腎不全はかなり抑制できる」と話している。

http://www.47news.jp/feature/medical/news/0916jinfuzen.html
 

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